SPUS 有用安全工房のロゴマークは、平和の象徴である Dolphin をモチーフにしています。
通常、安全に関係する色彩は、緑色や青色を基調としている場合が多いですが、有用安全は安全性だけでなく利便性や経済性を満足することが重要と考えており、活発に議論しながら方向を定めていくホットなプロセスを示すため、赤色の背景を基調とするロゴマークを創作しました。
真っ赤に染まる夕空を背景にして Dolphin が跳ね上がっているように、SPUS 有用安全工房はアクティブな活動を展開していきます。
SPUS
Study and Practice of Useful Safety
ぴくはりさーち (PeaCooHa Research)は産業用の機械装置を対象として、ISO 12100 機械類の安全性に基づく安全設計技術と、ISO/IEC 17050 供給者適合宣言に基づく安全品質経営を提供しています。これらは'ON-SAFE STyLE’®(Style of Run only on Safe Status / 安全な状況でのみ動かせる様式、商標 第6698674号)というコンセプトに基づいて、本質的安全設計方策(Inherently Safe Design Measures)と補完的保護方策(Complementary Protective Measures)の適用を最重要に位置付けています。
'ON-SAFE STyLE’®には、機能に関するエナジーフローの自然仕掛け 、制御に関するコアクティブモードの機械仕掛け、行動に関するストレスフリーの人為仕掛けの3つの要素があります。
エネルギーの自然な流れ=エナジーフロー (Energy Flow) は、物理的な流れの方向や速度を自然の原理に合わせて、機械の作動と人の行動を確定的にするために必要です。
機械の運転モードと安全モードを合わせる共奏モード=コアクティブモード (Coactive Mode) は、制御システムに正しく設定されることが必要です。運転モードから独立した安全モードが、運転状態を常時監視しながら逐次介入することにより、全ての運転モードにおいて確定的な安全性が確保できます。
もともと人は楽な方を選択する習性があります。心に生じている負担や苦痛からの解放=ストレスフリー (Stress-free) が感じられる保護方策を、自然な姿で機械に織り込むことが重要です。
そして、エナジーフローの自然仕掛け、コアクティブモードの機械仕掛け、ストレスフリーの人為仕掛けを同時に組み合わせることにより、オペレーターが無意識に操作する、いわゆる、自然な成り行きのまま機械を安全に運転や操作ができる状況を作り出します。機械と人に自然の要素を加えるアプローチが、有用安全を実現するための秘策ということです。
ぴくはりさーち (PeaCooHa Research) は、機械安全を産業界の底辺から頂上に向けて普及・浸透させるため、小規模事業者や中小企業への支援に特化した有用安全工房(SPUS)を設立し、各分野の識者との協業で運営しています。有用安全 (Useful Safety) とは、学問としての机上の論理や国際規格に留まらず、企画から稼動までの間に過去の教訓や経験を駆使して、安全性と経済性を高いレベルで両立させる実践的な安全技術のことです。
【機械包括安全指針】機械の製造等を行う者の実施事項について
2007年7月31日に厚生労働省より改正発令された【機械の包括的な安全基準に関する指針 (基発第0731001号)】は、2006年に改正された労働安全衛生法 第3条2項「機械その他の設備を設計し、製造し、若しくは輸入する者は、機械が使用されることによる労働災害の発生の防止に資するよう努めなければならない」にしたがい、リスクアセスメント(危険性および有害性等の調査)をコアツールとして、機械の製造者および労働者に機械を使用させる事業者それぞれに、機械類の安全化を努力義務として要求している指針です。
【機械の包括的な安全基準に関する指針】のベースである国際規格が、「ISO 12100 機械類の安全性-設計原則-リスクアセスメント及びリスク低減」ですが、国際規格は機械の製造者に対してのみに要求していることから、機械安全は指針の第二だけが対象となります。そこに記述されている要求が設計者として取り組むべき事項であり、その内容を理解して実践することが、機械メーカーとして果たすべき社会的責任であることは言うまでもありません。
機械の包括的な安全基準に関する指針 第2版(基発第0731001号)
第2 機械の製造等を行う者の実施事項 [労働安全衛生法第3条2項]
1. 製造等を行う機械の調査等の実施
機械の製造等を行う者は、製造等を行う機械に係る危険性又は有害性等の調査(以下単に「調査」)及びその結果に基づく措置として、次に掲げる事項を実施するものとする。
(1)機械の制限(使用上、空間上及び時間上の限度・範囲をいう。)に関する仕様の指定
(2)機械に労働者が関わる作業等における危険性又は有害性の同定(機械による危険性又は有害性として例示されている事項の中から同じものを見い出して定めることをいう。)
(3) (2)により同定された危険性又は有害性ごとのリスクの見積り及び適切なリスクの低減が達成されているかどうかの検討
(4) 保護方策の検討及び実施によるリスクの低減
(1)から(4)までの実施に当たっては、同定されたすべての危険性又は有害性に対して、別図に示すように反復的に実施するものとする。
2. 実施時期
機械の製造等を行う者は、次の時期に調査等を行うものとする。
ア. 機械の設計、製造、改造等を行うとき
イ. 機械を輸入し譲渡又は貸与を行うとき
ウ.製造等を行った機械による労働災害が発生したとき
エ. 新たな安全衛生に係る知見の集積等があったとき
3. 機械の制限に関する仕様の指定
機械の製造等を行う者は、次に掲げる機械の制限に関する仕様の指定を行うものとする。
ア. 機械の意図する使用、合理的に予見可能な誤使用、労働者の経験、能力等の使用上の制限
イ. 機械の動作、設置、保守点検等に必要とする範囲等の空間上の制限
ウ. 機械、その構成品及び部品の寿命等の時間上の制限
4. 危険性又は有害性の同定
機械の製造等を行う者は、次に掲げる機械に労働者が関わる作業等における危険性又は有害性を、別表第1に例示されている事項を参照する等して同定するものとする。
ア. 機械の製造の作業(機械の輸入を行う場合を除く。)
イ. 機械の意図する使用が行われる作業
ウ. 運搬、設置、試運転等の機械の使用の開始に関する作業
エ. 解体、廃棄等の機械の使用の停止に関する作業
オ. 機械に故障、異常等が発生している状況における作業
カ. 機械の合理的に予見可能な誤使用が行われる作業
キ. 機械を使用する労働者以外の者(合理的に予見可能な者に限る。)が機械の危険性又は有害性に接近すること
5. リスクの見積り等
(1) 機械の製造等を行う者は、4で同定されたそれぞれの危険性又は有害性ごとに、発生するおそれのある負傷又は疾病の重篤度及びそれらの発生の可能性の度合いをそれぞれ考慮して、リスクを見積もり、適切なリスクの低減が達成されているかどうか検討するものとする。
(2) リスクの見積りに当たっては、それぞれの危険性又は有害性により最も発生するおそれのある負傷又は疾病の重篤度によってリスクを見積もるものとするが、発生の可能性が低くても予見される最も重篤な負傷又は疾病も配慮するよう留意すること。
6. 保護方策の検討及び実施
(1) 機械の製造等を行う者は、3から5までの結果に基づき、法令に定められた事項がある場合はそれを必ず実施するとともに、適切なリスクの低減が達成されていないと判断した危険性又は有害性について、次に掲げる優先順位により、機械に係る保護方策を検討し実施するものとする。
ア. 別表第2に定める方法その他適切な方法により本質的安全設計方策を行うこと。
イ. 別表第3に定める方法その他適切な方法による安全防護及び別表第4に定める方法その他適切な方法による付加保護方策を行うこと。
ウ. 別表第5に定める方法その他適切な方法により、機械を譲渡又は貸与される者に対し、使用上の情報を提供するこ
(2) (1)の検討に当たっては、本質的安全設計方策、安全防護又は付加保護方策を適切に適用すべきところを使用上の情報で代替してはならないものとする。また、保護方策を行うときは、新たな危険性又は有害性の発生及びリスクの増加が生じないよう留意し、保護方策を行った結果これらが生じたときは、当該リスクの低減を行うものとする。
7. 記録
機械の製造等を行う者は、実施した機械に係る調査等の結果について次の事項を記録し、保管するものとする。仕様や構成品の変更等によって実際の機械の条件又は状況と記録の内容との間に相異が生じた場合は、速やかに記録を更新すること。
ア. 同定した危険性又は有害性
イ. 見積もったリスク
ウ. 実施した保護方策及び残留リスク
2024年8月1日
SPUS 有用安全工房
リーダー 保科修一
2001年に厚生労働省より発令された「機械の包括的な安全基準に関する指針」は、2006年の労働安全衛生法の改正に合わせて、2007年に第2版へ改正されています。同指針は「ISO 12100 機械類の安全性-設計の一般原則-リスクアセスメント及びリスク低減」に基づいており、機械装置に対するリスクアセスメントが始まってから17年が経過しました。
同指針は機械メーカーや機械ユーザーが所属する多くの産業団体に向けて発令され、各産業団体に加盟する大手企業では、機械安全を日常業務や安全活動として取り組んできました。その流れに合わせて安全コンポーネントの商品化が進み、高性能・多機能で安価なものが入手できるようになり、機械装置の安全化は着実に進んでいます。
しかし、主たる保護方策はガード・インタロックなどの安全防護であるため、対象とする機械装置は無人・自動で稼動できるものに留まっており、有人・手動で稼動する機械装置の安全化は思ったように進んでいません。同指針が産業団体に所属する比較的規模の大きな企業に向けて発令されたこともあり、安全防護が適用しにくい機械装置の多くを製造している中小企業メーカーでは、安全化の取り組みは未だに低調です。
安全防護を適用できない有人・手動で稼動する機械装置では、人間工学を考慮した本質的安全設計方策と補完的保護方策が必要で、そのような保護方策が中小企業メーカーへの機械安全の普及に繋がります。この課題に取り組むため、新たに設立する団体が私たちSPUS 有用安全工房で、機械安全を適用する機械装置の対象範囲を拡大し、中小企業メーカーの競争力向上を支援していきます。
2024年7月1日
SPUS 有用安全工房
リーダー 保科修一
SPUS 有用安全工房は、豊富な実務経験を有する技術者が参加している任意団体です。その経験を技術支援と安全審査に活かして、産業用の機械装置の製造を生業とする、中小企業メーカーの競争力を向上させることが第一の目的です。
機械には様々の種類があり、国際規格の規定要求だけでは合理的な方策を見つけることは容易ではありません。個々の機械の特徴に合わせた実現可能な方策が選択できるよう、対等な議論を活発に行って技術者自身の実務能力を高めることが第二の目的です。
SPUS 有用安全工房は、なぜ名称に研究 (Study) と実践 (Practice) ではなく「工房」を入れているのか?
幸運と安心を得るためには工夫 (DEVISALs) が必要になりますが、その工夫は事務机 (Simulation) ではなく作業台 (Prototype) で生まれることを表しています。有用性は現実 (Reality) を追求することで生まれるため、コンピューターシミュレーションが盛んな現代型のデータサイエンス (Data Science) よりも、試行錯誤を繰り返して築き上げる普遍型のクラフトサイエンス (Craft Science) が、適切なアプローチであるといえます。世の中の工房で日々行われている創作活動が、SPUS 有用安全工房でも同じように行われています。
日本の産業を底辺から支える中小企業の発展のため、SPUS 有用安全工房の主旨に賛同していただける技術者の皆様からの参加をお待ちしております。